2012-03-25

患者さんの言うことはすべて正しい

皆様こんにちは。
今日は珍しく、日曜日にも更新してみます。

なぜかって…

これはまったくの私事ですが、美子メディカルスパのスタッフブログに
感心したからです。

毎日更新しようね!と激を飛ばしてはいたものの、はじめのうちは
まったく更新されずでした。

でも最近、とってもマメに更新してくれています。
パソコンの苦手なスタッフも、どんどん文章が長くなり、
頑張っているの事にとっても感激しました。

ですから
自分自身も休みに関係なく、むしろ休みのほうが診療中と違って
ゆっくり時間も取れるはずなので、ちゃんと更新します!!

・・・三日坊主にならぬよう、頑張ります。

さて、本題♪

患者さんの言うこと(訴えること)はすべて正しい

恥ずかしながら、医者になって4月になれば12年目に突入という今になって
やっとこのことが自分の言葉として言えるようになりました。

年間延べ1万人以上を診察しますので、今まで8万人以上の人と
会話をしたでしょうか…そしてその中で、最近はしみじみと上記のように
感じます。

客観的に見て ほとんど気にならないような赤みだとしても
本人にとっては「今までこんなこと一度もなかったからおかしい」と
感じるのであれば、何か原因があって確かにおかしいのだろう。

皮疹がなくって、何も変わった様子が無くても
「ここ1ヶ月ヒリヒリして何か感覚がおかしい」というのであれば
やはり何かあるのだろうなぁ。

医学的な所見が無くて、検査値も異常が無ければ私たち医者は
「正常です」といってしまうものですが
ご本人が「おかしい」と訴えるからには、何らかの症状がある。
そして遺伝的なもの・一部の疾患を除いては、原因がある。

残念ながら、医者のほうで診断しきれなくって
なんとも無い・・・と答えてしまうことが多々あるのではないかな。

そんな風に感じます。




とある総合病院皮膚科で加療されていた患者さん。

どんなに強い薬を外用しても、さまざまな検査をおこなっても原因が分からない。
でも、ものすごくかゆくってかきむしった傷だらけで…
ステロイドや免疫抑制剤を内服してもまったく治まらない。

最終的には、ストレスからくるものと言われてしまったと、
当院を受診されました。

ご本人は、ストレスなんて無い、あると言えばこのかゆみによるストレス
ぐらいなものだ(←ごもっともな意見!!)っとおっしゃっていました。

現在薬としてある一番強いステロイドを塗っても変化が無い
ステロイド・免疫抑制剤を内服してもかゆみは一向に治まらない

それでも痒いとしたら考えられるものは
「疥癬(ヒゼンダニ)」ぐらいしかありません。

しかしながら疥癬は通常の生活で突然発症するものではないのです。

ダニの疾患ですから、どこかから移ってくるわけで
施設に家族が入院している とか
介護職である とか
寝たきりのご家族を自宅で介護している などが環境としては
よくあるパターンです。

この患者さんは、上記に当てはまるようなことは一つもないのです。

しかも、何度皮疹を検査してもダニは見つかりません。
加えて、疥癬であれば一緒に寝ている子供さんにもうつるはずですが
家族に同様の症状は無い。

客観的に判断しても、疥癬も考えにくい…

イロイロ検討のうえ、ご本人と相談し疥癬の治療薬を内服してもらうことに
しました。




すると

1度目の内服でかゆみが激減し
1週間後の2度目の内服でほぼかゆみが無くなったのです。

解説:疥癬の薬は1度内服し、その1週間後にもう一度内服という特殊な飲み方をします。

やっぱり
ストレスが原因ではなかったのですね。

未だにこの患者さんが疥癬だったのかどうかは分かりません。
もしかすると、内服していただいた薬が同じく適応になる
腸管糞線虫による皮疹だったのかもしれません。

腸管糞線虫感染症は、私も実際に見たことが無いので皮疹が出ても
正直分からないです。

でも私が分からないということと、原因不明と言うのは
まったく別なこと、それを間違えてはいけないなぁという良い教訓でした。

日々の診療の中で、本当に患者さんから教えられることが多いです。

皮膚科なんて、ステロイドか水虫の薬を出すだけだろうと
他科の先生からは思われるかもしれませんが、イヤイヤ、意外に奥が深いです。

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